昨季、５８年の長嶋茂雄（巨人）を超える新人セ・リーグ記録の１５９安打に加え、盗塁王にも輝いた阪神・近本。安打数に関しては「今、僕は何本ですか？　長嶋さんは何本でしたっけ？」とまるで関心がなかったのに対し、「それが目標ですから。数を意識します」と盗塁へのアプローチは対照的だった。近本にとって、盗塁に対するこだわりは、それほど強かった。

　昨季の盗塁数は３６。タイトルを獲得したが、失敗も１５あった。３３盗塁のヤクルト・山田哲は３、３０盗塁の中日・大島の７に比べると成功率は低い。しかし近本にとって、企図数が大事なのだという。意外だが「アマ時代からたくさんアウトになってましたから」と笑う。スタート、投手の癖など手探りの中で失敗も糧とし、結果につなげてきた。

　「足にスランプはあります」。シーズン終盤、近本が力を込めたことがあった。世界の盗塁王・福本豊さん（スポーツ報知評論家）が同じ考えを持つことを伝えると、強くうなずいた。５月までに１５盗塁も、６、７月はそれぞれ３盗塁。９月は１０盗塁と復調し、山田哲を抜いた。

　初のプロ生活は苦労の連続。睡眠時間が１時間前後しただけで足の状態が驚くほど変わった。体の状態がいいにもかかわらず、結果が出ないこともあった。秋季キャンプでは「あと５個はセーフになれた」とベースに到達する際、スライディングで折る方の右足が内側に入る癖の修正に取り組んだ。