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【阪神】ノムさんが「赤星引退」の一報に声を荒らげた夜…記者コラム「伝説には残らない野村番ノート」
投稿日 2020年5月6日 12:02:49 (阪神タイガースまとめ)
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月日は流れますが、偉業は決して色あせることがありません。スポーツ報知の「最後の野村番」加藤弘士デスクが、現場で体験した知将の「伝説には残らない」人間くさいエピソードの数々を、全5回で描きます。
第1回はクールなノムさんが声を荒らげた、まな弟子の引退決断時の話です。
「おい、お前、赤星の連絡先分かるか。教えてくれ。引退なら撤回すればいい。もったいない。もったいないよ…」
いつものあの口調とは全然違う、感情の高ぶった声。今でも耳にこびりついて離れない。
楽天監督退任直後の2009年12月9日。野村さんは沙知代さんと都内ホテルで「ゆうもあ大賞」の表彰式に出席した。
毎年その年を明るくした人に贈られる賞で、アナウンサーの徳光和夫さん、歌手の秋元順子さんとともに受賞したのだが、報道陣は芸能担当ばかり。
野球記者は自分だけだった。私も芸能取材班から「ノムさんがこんな表彰式に出るよ」と教えてもらい、「担当替えのあいさつができれば」と足を運んだのだった。
和やかにイベントが終了し、芸能レポーターによる囲み取材も終えた頃、デスクからの電話が鳴った。
「赤星が引退を発表した。ノムさんの反応を取ってくれ」
驚いた。確かまだ33歳のはず。しかし、持病の首痛は「中心性脊髄損傷」と診断されていた。悪化すれば生命にかかわると診断されたため、球団の引退勧告を受け入れたのだ。
野村さんは阪神監督だった2000年、当時JR東日本の赤星を視察している。「あの足は戦力になる」と俊足にほれ込み、スカウトの反対を押し切って、ドラフト4位指名したというのだ。
かつて、こんな話をしてくれたことがある。
「入団してから、赤星は最初、ホームランバッターのようなバットを持っていた。俊足を生かす打撃をしていなかったんだ。
だから俺は『“足が速い”というところから野球せい!』と言い続けたんだよ。とにかく、三遊間に転がして走れ。
セーフティーバントを転がして走れと。その結果、内野安打が多くなり、出塁率が高くなったんだ」
野村さんの持論である、選手を一流に導く「見つける」「育てる」「生かす」という3段階のステップ。
指導者と選手が同じ目的意識で取り組んだ結果、赤星はスター選手になった。それだけに、思い入れは強かった。
控え室に戻るところを直撃した。
カントク、赤星選手が引退を発表しました―。
表情が変わった。
それは本当か? 本当なのか?
お前、ちょっと来い。
5/5(火) 19:19配信
阪神タイガース 2009年9月12日 赤星、決死のダイブ
先ほどの華やかな表彰式とは打って変わって、重苦しい空気が充満する中、現状を説明した。
顔つきから、悲しみが充満しているのが分かった。
担当4年目。それまで見たことがない、つらい表情だった。
そして冒頭の言葉が飛び出た。「阪神担当に聞いてみます」。私はいったん部屋を出て、虎番の先輩記者に相談した。
「ノムさんの気持ちも分かるけど、最悪、命の危険もあるほどの症状や。本人の決断を尊重してやらなあかんで」
想像を超える重症。先輩記者の言葉は正論だった。
しかし、野村さんは収まらなかった。旧知の阪神関係者の携帯を鳴らした。「赤星へ俺に電話するよう言ってくれ。東京にいい病院を知っているんだ。紹介したいんだよ。
引退は医者に診てもらってからでも遅くないだろう」。電話を切ると、大きくため息を漏らして、こう言った。
「俺はボロボロになっても、現役を続けたからさ…」
自身の引退は45歳。老いにあらがい、燃え尽きるまで現役に固執した。12球団のユニホームを着る喜び、脱ぐ寂しさ。
選手として、監督として、「現役であること」に執念を燃やし、大きな仕事を成し遂げてきた男の矜持が、言葉からにじんでいた。
「働き盛りなのに残念だ。引退はいつでもできる。記者会見をしたからって、これから撤回すればいいじゃないか。辞めるのは惜しいよ…」
野村野球といえばデータ重視の「ID野球」のイメージが一般的だ。しかし同時に、情に厚く、情で動く人だった。
伝説には残らない、伝記にも描かれない、野村さんのささやかな裏話を書き残したい。
記者として、書くことだけが恩返しになると信じて。(デジタル編集デスク・加藤 弘士)=随時掲載=
マイク入ってねーんだよ!!
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Source: 阪神タイガースちゃんねる
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