「ここ数試合、チャンスで打てていなかったですし、なんとかしたいという気持ちで打席に立ちました」

２打席目にはバットを根元から折られて遊飛に打ち取られていた。それでも、大事な局面で結果を残し続ける新人には引き出しの多さがあった。

「ずっと（バットを）短く持ってたんですが、あの打席から逆に、長く持って、バットの先を感じるような打撃にして、うまく外のボールを打ったのかな、と思います」

２―３と１点ビハインドで迎えた七回。先頭で代打の代打で打席に立ったミエセスが四球を選び、すぐさま代走に熊谷がコールされる。しかし近本、中野が連続三振。虎党のため息が立ち込めたそのとき、京セラドームに快音が響く。

「本当に、試合に出る権利を、まだ望みをつないだかなって思います」

３番手の左腕・斎藤の初球のツーシームを一振りで仕留めた。打球が左中間で大きく弾むのをみて一走・熊谷は快足を飛ばして一気に本塁へ。同点のホームインとなったヘッドスライディングを見届けた森下は、二塁で冷静にうなずいた。

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