知人女性への強制性交の疑いで5月23日、警視庁麻布署から書類送検されたワールド・ベースボール・クラシック（WBC）日本代表の西武・山川穂高内野手（31）は出場選手登録を抹消された後は依然として所沢の球団施設で練習を続けている。東京地検によって起訴、不起訴の判断が下されていない中、今後の動向について様々な可能性が取りざたされている。
プロ入り10年目の山川は昨オフの西武との契約更改交渉では球団の4年契約の提示を固辞し、今季は単年契約で迎えた。今季も実力通りの力を発揮していれば国内フリーエージェント（FA）の資格条件を取得し、今オフ、ソフトバンク入りする、という見方が半ば既成事実化していた。

それは昨年のオールスター戦での打撃練習中、出場選手同士の会話で「アグー（山川の愛称）、ソフトバンク行くらしいよ」との音声がNPBの公式動画チャンネルに流出。「ソフトバンクでプレーすることを希望している」という山川の気持ちを代弁したものではないか、という憶測が一気に広まったためだ。この動画の存在が明らかになると、西武ファンの悲鳴や苛立ちも表面化した。プロ野球を長く取材するベテラン記者はこう明かす。

「去年のオールスターの一件があってから『山川がFA権を取得したら、ソフトバンク入り』の話は既成事実化しました。シーズン中にFA権を行使する資格を獲得しても、その権利を得た選手が希望する球団との事前交渉はルールで禁じられているため、山川のようにFA権取得を間近に控えた、実力ある選手の場合、他球団の関係者と表立って話し込むことは普通は控えるんです。

ただ、FA権をとるまで1年近く時間があった、ということもあったのか、昨年、あの動画が流出した後も山川は“事前交渉”のリスクを気にするそぶりも見せず、ソフトバンクの本拠地・ペイペイドームの試合のときは西武より先に練習しているホークスの練習中に姿を見せ、練習を見ている王会長のもとによく挨拶に行っていました。王会長もホームランバッターのことが好きなので、30分ぐらい話し込んでいることもよくありました」

昨シーズンを含めて3回、パ・リーグのホームラン王に輝いた山川は、王会長にとっては、近い将来の獲得交渉を視野に入れた話というよりは、「挨拶に来たホームラン打者の後輩」というスタンスで接していたのだろう。

しかし山川が国内FA権取得まであと15日と迫った5月、文春オンラインの報道によって、知人女性に対する強制性交疑惑が発覚。昨年11月、東京・港区のホテルで、当時20代の知人女性に対して性的暴行をしたとされ、手荒く扱われた女性は出血し、山川に対して処罰感情を持ったため被害届を提出した。

山川は女性と男女の関係にあったことは認めたものの、報じられている「無理矢理」という部分は強く否定。警視庁は、女性と山川の両者から任意で事情を聴くなど慎重に捜査を進め、5月23日に書類送検された。

同じパ・リーグの他球団の中心選手による不祥事。親しい関係にあったとしても、だまって捜査の行方を見守ることが一番波風が立たない過ごし方だが、王会長は“動いた”。5月19～21日、西武がソフトバンクと3連戦を戦うためにペイペイドームに姿を見せると、王会長が西武のコーチ陣と会話をかわすシーンが見られたという。

「『（山川の件は）どうなっているの？』と現在の状況や今後の見通しを尋ねたみたいです。それがFAになった場合に獲得するのか、しないのか、といった話とは全く別次元で、むしろ、今後の野球界全体に与える影響なども気にしての質問だったと思います。ただ、事件が起きる前まで王会長は山川と何度も話し込む中で『どんな人間か』という人柄も把握されていたと思う。だからこそ、今回の山川の一件は余計に複雑な心境なのではないかと思いますよ」（前出のベテラン記者）

かつて、王会長が巨人の監督を終えて一時期、ユニフォームを着なかった充電期間に、アマチュア選手として王会長からアドバイスを受けたことがある西武OBはこう明かす。

「起訴なのか、不起訴なのかによって西武の対応、さらに他球団の対応は変わると思いますが、山川が事件をおこしてしまった今、以前から球界で噂されているホークスへの移籍はないと思っています。たとえば山川が不起訴になって西武が来季の契約をしない、となった場合、その不起訴の理由次第では他球団も獲得に乗り出すかもしれない。ただ、ソフトバンクの場合、現場が『欲しい』と言ったとしても、王さんが許さないんじゃないかな、と思います。

私が王さんにアドバイスをしていただいたときに一番心に残っているのは、『野球はもちろん大事だけど、社会人としてしっかりしていないと、やはり野球はうまくならないよ』という言葉でした。王さんは現役時代、ご自身の努力に努力を重ねてあそこまで上り詰めた人なので、余計に心に響いたんです。王さんは今、もうユニフォームを脱いでいらっしゃいますが、野球を離れた場面での他の人に対する気配りの話はいろいろと聞きますし、そこが王さんの根っこにある部分。王さんの人柄や大事にされてきたことを考えると、ホークスが山川を獲得することはないと思います」

王会長は現職に就いた後、2010年のドラフト会議で秋山翔吾（現・広島）か柳田悠岐かで指名を迷っていたとき、「打球を飛ばせるのはどっちなんだ」という王会長のひと言で柳田の獲得が決定したエピソードが有名だが、それ以外は、現場の編成方針に大きく口を挟んでくることはなかったという。ただ今回の山川については、ソフトバンクが獲得できる状況が揃ったとしても、王会長の意向は決して、無視できないだろう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/20bb3eb188806abed20c1d9dd5ce6aa71c9132cc

王だけにワンチャンスってか

水に流して貰えよ　福岡だけに