敵地、マツダスタジアムで迎えた広島戦
先発が初回から失点、打線も広島の投手陣相手に沈黙し惨敗だった
スタジアム内に選手のため息、どこからか聞こえる「セ・リーグのオリックスwww」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年より監督就任した矢野は独りベンチで泣いていた。
選手時代で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼出来る仲間達・・・
それを今の阪神で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」矢野は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、矢野ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、明日も敗けを覚悟しなくちゃな」矢野は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、矢野はふと気付いた

「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」
ベンチから飛び出した矢野が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする矢野の背中に、まさかの声が聞こえてきた
「矢野、この次行くぞ、準備しろ」声の方に振り返った矢野は目を疑った

「ま・・・真弓さん？」 「なんだ矢野、居眠りでもしてたのか？」
「か・・・金本？お前なんでユニフォームを・・・？」 「ちょっと矢野さん、金本さんは肩だけしか引退してないですよwww」
「関本・・・」 　矢野は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた

2010年9月30日 対横浜ベイスターズ 9回表
阪神3-1横浜
１番：マートン　２番：平野　３番：鳥谷　４番：新井　５番：俊介　６番：藤川球　７番：城島　８番：坂　９番：大和
暫時、唖然としていた矢野だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ！」
狩野からグラブを受け取り、バックネットで最後の勇姿を見せるためにアップする矢野、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

その裏の回、ベンチで冷たくなっている矢野が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った

行くな！行くな！越えるな！

その台詞いいたいの投手の西だと思うわ

あっ……

6番…