プロ野球の開幕が見えてこない。こんなとき闘将ならどんなメッセージを発信しただろうか。「今の敵は新型コロナウイルスだ」。こんな感じか…いや、こちらがすぐに思いつくようなことは言わない。担当記者の想像を絶する言葉を発したからこそ、燃える男は絵になった。星野仙一氏が旅立ち、２年が過ぎた－。

　２００３年、阪神は１９８５年以来１８年ぶりのリーグ優勝を果たした。９０年代には最下位争いを繰り返し、名将野村克也氏をもってしても立て直すことができなかった。もう二度と優勝できないのでは…とまで思われたチームを、星野監督は就任２年目にして頂点へと導いた。

　なぜそれほどの短期間でチームを変えることができたのか。星野氏はたびたび「野村さんが種をまいてくれたから」と前任者に敬意を払った。確かにそれは大事な要素ではあったが、もちろんそれだけではない。阪神の低迷期から０３年の優勝への経過を現場記者として見てきた私は、星野氏が監督であり敏腕ＧＭでもあったからだと見ている。

　もちろん中日、阪神、楽天と３球団を優勝へ導いた名将でもある。しかしグラウンドを離れたシーズンオフの動きこそ、星野氏の真骨頂だった。

　０１年オフの阪神監督就任直後、まずは島野ヘッドコーチ、田淵チーフ打撃コーチらを招へいした。中日の２軍監督が決まっていた島野氏については、自ら中日球団に話を通した。マスコミの発信力も活用し「どんな名刀でもオレとシマちゃんの仲を切り裂くことはできない」と囲み取材で訴えた。星野野球には欠かせない参謀役であり、阪神コーチの経験もあった島野氏、そしてかつてのミスタータイガースであり盟友でもある田淵氏の獲得は、星野阪神の船出に追い風を吹かせた。

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